ポリ塩化ビフェニル(PCB)について

①ポリ塩化ビフェニルの化学構造と用途
ポリ塩化ビフェニルまたはポリクロロビフェニル (polychlorobiphenyl) は、二つのベンゼン環が結合して形成されるビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称であり、一般式 C12H(10-n)Cln (1≦n≦10) で表されます。その略称はPCBです。置換塩素の数によりモノクロロビフェニルからデカクロロビフェニルまでの10種類の化学式があり、置換塩素の位置によって、計209種の異性体が存在します。

油状の物質であり、脂肪には溶けやすいが水には極めて溶けにくい、沸点が高い等の物理的な性質を有しています。また、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いなど、化学的に安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されてきましたが、現在は日本国内では製造・輸入ともに禁止されています。

②ポリ塩化ビフェニルの毒性
ポリ塩化ビフェニルは慢性的な摂取によって脂肪組織に蓄積しやすい物質であり、人体に対して極めて有害であり様々な症状を引き起こします。発癌性、催奇性があり、また皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことが分かっています。外見的な中毒症状としては、目やに、爪や口腔粘膜の色素沈着、ざ瘡様皮疹(塩素ニキビ)、爪の変形、まぶたや関節の腫れなどが報告されています。

PCBの毒性の強さは、異性体により大きな差があります。発癌性、催奇性の点でダイオキシン類(ポリクロロジベンゾジオキシン、ポリクロロジベンゾフラン)に似た毒性を示すものを特にダイオキシン様PCBと呼んでおり、PCBの健康被害や環境汚染で問題となっているのは、大半がダイオキシン様PCBです。なかでもコプラナーPCB (コプラナーとは、共平面状構造の意味)と呼ばれるPCB異性体の毒性は極めて強いものがあります。
 
PCBが大きく取りあげられる契機となった事件としては、食用油の製造過程において熱媒体として使用されていたPCB が食用油に混入し健康被害を発生させた、1968 年のカネミ油症事件があります。この事件によって、PCBの毒性とそれによる環境汚染が社会問題化した結果、日本国内では1972年以降、PCBは製造されていません。

③ポリ塩化ビフェニルを使用していた製品

(1)絶縁油
トランス用:ビル・病院・鉄道車両・船舶等のトランス
コンデンサ用:蛍光灯・テレビ・電子レンジ等の家電用、直流用コンデンサ
(2)熱媒体(加熱用、冷却用)
 各種化学・食品・合成樹脂工業等の諸工業における加熱・冷却、
船舶の燃料油予熱、集中暖房、パネルヒーター
(3)潤滑油
高温用潤滑油、油圧オイル、真空ポンプ油、切削油、極圧添加剤
(4)可塑剤
絶縁用:電線の被覆・絶縁テープ
難燃用:ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂
その他:ニス、ワックス・アスファルトに混合
(5)感圧複写紙、塗料・印刷インキ
 ノンカーボン紙(溶媒)、電子式複写紙
印刷インキ、難燃性塗料、耐食性. 塗料、耐薬品性塗料、耐水性塗料
(6)その他
紙等のコーティング、自動車シーラント、陶器の彩色、農薬、石油添加剤

④規制内容
2001年7月に「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)が施行されました。ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理のための必要な体制を速やかに整備することにより、その確実かつ適正な処理の推進するものです。PCB廃棄物を保管する事業者は、PCB廃棄物の保管・処分の状況を毎年度自治体に届け出るとともに、2026年度末までにこれを適正に処分しなければなりません。

なお、PCB廃棄物は、PCB濃度等により、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分類されます。高圧トランス、高圧コンデンサ、業務用・施設用蛍光灯安定器等の高濃度PCB廃棄物は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)で処理を行っています。低濃度PCB廃棄物については、環境大臣が認定する無害化処理認定施設及び都道府県知事等が許可する施設で処理を行っています。

2014年6月には「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」(環境省)が変更となり、JESCOのPCB処理事業所ごとに計画的処理完了期限が定められました。この処理事業所は全国に五カ所あります。

世界的にも、一部のPCB 使用地域から全く使用していない地域(北極圏など)への汚染の拡大が報告された事などを背景として、国際的な規制の取り組みが始まっており、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)が2004 年5 月に発効しています。この条約ではPCBに関して、2025 年までの使用の全廃と2028 年までの適正な処分を求めており、我が国は2002 年8 月にこの条約を締結しています。

⑤PCB含有有無の判別方法

高濃度PCBを含むトランス、コンデンサ、業務用・施設用蛍光灯安定器等については、製品の銘版に記載されているメーカー、型式、製造年月等の情報から判別できます。
トランス及び高圧進相用コンデンサでは、国内メーカーで昭和27 年(1952 年)以前及び昭和48 年(1973 年)以降に製造されたトランス及び高圧進相用コンデンサについては、高濃度PCB を使用したものはないと考えられます。また、安定器については、国内メーカーで昭和31 年(1956 年)以前及び昭和48 年(1973 年)以降に製造された照明器具については、PCB 使用安定器を使用したものはないと考えられます。ただし、昭和51 年(1976 年)10 月までに建築・改修された建物には、PCB 使用安定器が使用された可能性があります。

次に低濃度PCB廃棄物に該当する電気機器等に関する判定法ですが、封入されている絶縁油のPCB 分析を行いPCBの有無を確認して判別できます。絶縁油中のPCB含有分析を行った結果、絶縁油PCB濃度が0.5mg/kgを超える場合はPCB廃棄物 (特別管理産業廃棄物)に該当します。
PCBの有無を知るためには、いわゆる環境分析の一種としての絶縁油中のPCB含有量測定が不可欠であり、測定機を有する外部業者に測定を依頼するのが一般的です。
PCBの詳しい含有量を測定するためには、いわゆる精密分析が必要とされています。その測定機としては、GC/ECD(ガスクロマトグラフ/電子捕獲型検出器が一般的に用いられています。

なお、低濃度PCB廃棄物に該当する部品カテゴリーに属していて、日本電機工業会の加盟メーカーで平成3年(1991 年)以降に製造されたコンデンサについては、PCBの汚染がないと言えます。また、日本電機工業会の加盟メーカーで平成6年(1994 年)以降に製造されたトランスで、絶縁油に係るメンテナンス等が行われていないこと、又は、汚染のない油への入替え等が行われていることが確認できれば、PCBの汚染がないと言えます。

 

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