玩具に対するEN71-Part3規格について

①EN71-Part3規格
「EN 71(Safety of toys/玩具の安全性)」とは,1988年に制定された玩具の安全性に関する欧州規格のことを指しています。この規格はPart 1~Part 13に分類されており,Part 3では、「特定元素の移行(Migration of Certain Elements)」として,玩具中の重金属類が,接触や誤飲により健康に影響を与えるレベルで含まれているか否かを調べる溶出試験について記載しています。具体的には、6 歳以下の小児用として設計された玩具のうち、なめたり呑み込んだりする可能性のある部品及び構成品における重金属の経口摂取について、元素の移行試験(塩酸による溶出試験)に関する内容および方法が規定されています。

旧規格が出来てから約20年が経ち,新しいタイプの玩具が登場して子供への潜在的危機が増加したこと,消費者の安全性に関する意識が向上したことがあり,それに適合した規格を作成する必要が生じました。そのため,新玩具指令(2009/48/EC)が作成・採択され,新玩具指令を具体的に実施するための規格「EN 71(Safety of toys/玩具の安全性)Part 3(2013)」が2013年7月に運用開始されました。
EU加盟国は、既に2011 年1 月までにこの新玩具指令に対応した国内法制化を終えています。従って本指令に該当する製品は、EU諸国内で上市(生産・販売)する場合には、これに従う必要があります。

日本国内での玩具規制としては,乳幼児用玩具は「食品衛生法」,電熱式玩具及び電動式玩具は「電気用品安全法」の規制があります。

②新しい欧州玩具安全規制の規格内容
新規格EN 71 Part 3(2013)のPart3において、従来規格EN 71 Part 3(1995)から変更された点は以下の4点です。

(1) 区分の新設
玩具材料が以下のカテゴリーⅠ~Ⅲに分類され,それぞれの区分ごとに各重金属ごとの含有量限度値が設定されました。

(分 類: 主な玩具材料)
カテゴリー Ⅰ 乾燥している,もろい,パウダー状又は柔軟な材料
カテゴリー Ⅱ 液体又は粘性のある材料
カテゴリー Ⅲ かきとることができる材料

(2) 検査項目の拡大
従来のアンチモン(Sb),ヒ素(As),バリウム(Ba),カドミウム(Cd),クロム(Cr),鉛(Pb),水銀(Hg),セレン(Se)の8元素から,アルミニウム(Al)等の17元素19項目へと検査項目が大幅に増加しました。
(3) クロムは3 価クロム及び6 価クロムに分類され,それぞれに限度値が設定されました。
(4) スズは全スズ及び有機スズに分類され,それぞれに限度値が設定されました。

・検査対象となる材料の種類
①コーティング材
②ポリマー
③紙及び板紙
④繊維製品
⑤ガラス、セラミック、金属材料
⑥痕跡を残すことを意図した材料(鉛筆、クレヨン、チョークなど)
⑦モデリング材料(粘土、石膏など)
⑧液体塗料・粘性材料(インク、フィンガーペイント、スライム、シャボン玉液など) ⑨スティックのり
⑩その他の材料(木材、石膏ボード、骨、皮革など)


・各カテゴリー別の限度値
No、元 素、移行限度値、CategoryⅠ(mg/kg)、CategoryⅡ(mg/kg)、CategoryⅢ(mg/kg)
1、Aluminium(アルミニウム)、5625、1406、70000
2、Antimony (アンチモン) 、45 、11.3 、560
3、Arsenic (ヒ素) 、3.8 、0.9 、47
4、Barium (バリウム) 、4500 、1125 、56000
5、Boron (ホウ素) 、1200 、300 、15000
6、Cadmium (カドミウム) 、1.3 、0.3 、17
7、Chromium(III) (3価クロム)、37.5 、9.4 、460
8、Chromium(VI) (6価クロム) 、0.02 、0.005 、0.2
9、Cobalt (コバルト) 、10.5 、2.6 、130
10、Copper (銅) 、622.5 、156 、7700
11、Lead (鉛)、13.5 、3.4 、160
12、Manganese (マンガン) 、1200 、300 、15000
13、Mercury (水銀) 、7.5 、1.9 、94
14、Nickel (ニッケル)、75 、18.8、930
15、Selenium (セレン) 、37.5 、9.4 、460
16、Strontium (ストロンチウム) 、4500 、1125 、56000
17、Tin (スズ) 、15000 、3750 、180000
18、Organic tin(有機スズ10種類) :注1 、0.9 、0.2 、12
19、Zinc (亜鉛) 、3750 、938 、46000

注1:メチルスズ,ジ-n-プロピルスズ,ブチルスズ,ジブチルスズ,トリブチルスズ,n-オクチルスズ,ジ-n-オクチルスズ,テトラブチルスズ,ジフェニルスズ,トリフェニルスズ

③対策

自社製品が欧州玩具安全規制EN71-Part3に適合しているかどうかを、あらかじめ確認しておく必要があります。このため、いわゆる環境分析の一種としての製品中の化学物質の含有量測定が不可欠であり、測定機を有する外部業者に測定を依頼するのが一般的です。
上記規格の各種重金属の詳しい含有量を測定するためには、いわゆる精密分析が必要とされています。EN71- Part3溶出試験では、各々の素材に応じた試料を調製後、振とう器を用いて溶媒中(胃液に近い濃度の希塩酸)に目的の成分を溶出します。次に、この溶液中の重金属含有量をICP-MS(プラズマ発光分光分析)やGC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)を用いて定量します。

 

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