VOC放散量分析について

①VOC放散とその規制
揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds 略称:VOCs、VOC)は、常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称です。具体的には、トルエン、ベンゼン、フロン類、ジクロロメタンなどを指し、これらは溶剤・燃料として幅広く使用されています。しかし、環境中へ放出されることで、公害などの健康被害を引き起こす原因物質となっていることが、近年明らかとなりました。特にホルムアルデヒドによってシックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こすことが社会的に広く認知されるようになり、大きな問題となっています。

世界保健機構(WHO)はVOCを以下のように分類しています。


日本語呼称 / 英語表記(略称) / 沸点範囲(℃) / 化合物の例

高揮発性有機化合物 / Very Volatile Organic Compounds (VVOC) / 氷点下(< 0)~ 50-100 / プロパン、ブタン、塩化メチル

揮発性有機化合物 / Volatile Organic Compounds(VOC) / 50-100 ~ 240-260 / ホルムアルデヒド、d-リモネン、トルエン、アセトン、エタノール、2-プロパノール、ヘキサナール

準揮発性有機化合物 / Semi Volatile Organic Compounds(SVOC) / 240-260 ~ 380-400 / 殺虫剤 (DDT、クロルデン)、可塑剤 (フタル酸化合物)、難燃剤(PCB、 PBB)

粒子状有機化合物 / Organic compound associated with particulate matter or Particulate Organic Matter (POM) / 380以上


次に各国の規制について述べます。

・日本
VOCが光化学オキシダントと浮遊粒子状物質の主要な原因物質であることが大きな社会問題となったため、2004年5月に大気汚染防止法が改正されました。さらに、この改正に基づいて大気汚染防止法施行令(政令)大気汚染防止法施行規則(省令)が翌年に改正されて、主要な排出施設でのVOC排出規制が行われることになりました。その内容は以下のようになります。

・VOC排出施設の設置と届け出の義務化
・排出施設の排出口におけるVOC濃度基準の遵守
・VOC濃度の測定と記録の義務化

このほかの規制としては、2003年に建築基準法が改正され、シックハウス症候群対策を目的とする住宅建材等の認定制度が開始されました。ホルムアルデヒドの放散量の大小によって、「F☆☆☆☆」のように等級を付けて表示されています。(JIS・JAS共通)
公共住宅などでは、ホルムアルデヒド以外のVOCについても、住宅引渡し前のJIS試験法による室内のVOC放散量分析・濃度測定が要求されています。

シックハウス症候群に関しては、パソコンなどのIT機器もVOCの発生源であるとの疑いが強まりました。これに対処するため、社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)では業界の自主規格として、「パソコンに関するVOCガイドライン」を2005年9月に策定しました。その後、IT機器・情報家電に関するVOC規制を定めた国際規格であるISO/IEC28360も2007年9月に制定されました。
JEITAのガイドラインは三度の改訂を経て2014年現在、「PC およびタブレット端末に関する VOC放散速度指針値 (第 1版)」として機能しています。


・EU欧州連合

EUにおけるVOC規制は複数あります。

(1) 「統合的な汚染防止及び抑制に関する指令(IPPC指令)」1996/61/ECによって、特定の産業活動に対して設備ごとに排出基準を制定。具体的には、「特定事業・施設における有機溶剤の使用による揮発性有機化合物の排出の制限に関する指令(VOC指令、溶剤指令)」1999/13/ECの中で詳細に規定。

(2) 「建築物や自動車補修など特定用途の塗料やワニスに対する指令」2004/42/ EC によって、特定の製品分類にVOCの含有量の上限を設定。これらの製品は、この指令に掲げる条件に適合しなければ販売禁止。

(3) 「国別排出上限指令」2001/81/ECでは加盟国ごとにVOCの最大排出枠がきめられている。EU加盟国は2010年までに、各国の削減手法で目標を達成することを要求されている。


②対策
塗料、テープ、樹脂を含む電気製品などの自社製品が、各国のVOC規制に適合しているかどうかを、あらかじめ確認しておく必要があります。このため、いわゆる環境分析の一種としての、自社製品のVOC放散量分析が不可欠であり、いわゆる精密分析が可能な測定機を有する外部業者に測定を依頼するのが一般的です。対象製品の大きさに応じたチャンバーの中に製品を入れ、チャンバー内を指定条件下に保持した状態で製品から放散されるガスを袋中に捕集します。
自社施設等からのVOC放散量を測定する場合には、排出設備の排出口等からVOCを含む排気を袋に捕集します。

これらの捕集したガスを、HPLC(高速液体クロマトグラフ)、GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)、NDIR法(触媒酸化-非分散形赤外線分析計)、FID法(水素炎イオン化形分析計)等によって分析し、含有するVOC濃度を確定します。

シックハウス対策等のための建材・部材からのVOC、ホルムアルデヒド及びカルボニル化合物の放散量確認試験は、日本国内向けではJIS A 1901に規定された測定方法に沿って実施します。JIS A1901では、施工前の内装に用いられる建築材料を、特定環境下に設定した20Lの小形チャンバーを使用した放散試験を実施しています。 このような建築材料に関するVOC試験を外部に依頼する場合には、ISO/IEC 17025認定取得済であり測定システムと測定結果について認定機関が保証している試験機関を選ぶべきです。

 

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